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生物多様性の回復:『トキ』

by オリビエ・ラングラン CEPFエグゼクティブ・ディレクター

​絶滅危機からの復活


トキは、かつては絶滅したと考えられていたが、現在はIUCNレッドリストの”Endangered”-絶滅危惧IB類-に分類されている。© Olivier Langrand

 

トキ(学名:Nipponia nippon)は古代から日本に生息している鳥で、日本書紀(720年編纂)にも出てきます。昔は日本だけでなく、シベリア南東部、中国東部、朝鮮半島にも生息していました。


ところが、
1934年にトキの生息数が激減していることが判明します。日本全土で数十羽ほどになっていたのです。同年、トキは天然記念物に指定されましたが生息数の減少は止まらず、1957年にはわずか11羽となりました。        

種の生存は、自然保護活動家の多大な献身の成果だ。© Olivier Langrand

 

トキの生息数の減少にはいくつかの理由があります。生息地域の森林伐採、湿地から水田への転換、農薬の乱用、狩猟、などです。1960年にはICBP International Committee for Bird Preservation: 国際鳥類保護会議。現在のバードライフ・インターナショナル)によって国際的に保護が必要と認定され、1967年に新潟県佐渡市に「佐渡トキ保護センター」が設立されました。


1981年には、トキは佐渡に5羽が残るだけだと考えられていました。この5羽を捕獲して人工飼育を始めましたが、残念ながらこの5羽からヒナは誕生せず、2003年には野生最後のトキ、「キン」が佐渡トキ保護センターで36年の生涯を終えました。


最後の日本産のトキ、『キン』のモニュメント。© Olivier Langrand

 

地球上から完全に絶滅したと考えられていたトキですが、1981年に陝西省で7羽が発見されました。中国は、トキの保護と人工飼育のための保護プログラムをすぐに立ち上げました。その成果は順調にあらわれ、人工繁殖のために中国が日本にトキのつがいを貸し出すという、国際的な保全プログラムも始まりました。そして数年後には、佐渡トキ保護センターで、そのつがいからヒナが誕生しました。


佐渡汽船のりば。外壁にトキが舞っています。© Olivier Langrand

 

2008年、人工飼育された10羽のトキが、野生に放鳥されました。翌年にはさらに19羽が放たれ、近隣の田んぼで使用する農薬を減らそうという住民たちの意識改革につながりました。


2012年、トキのつがいが佐渡に放鳥され、2016年には野生でヒナが誕生しました。飼育を始めて42年後、ついにトキが野生に戻ってきたのです。


佐渡の住民たちの、トキへの強い誇りが感じられる標識。様々な商用や道路標識に、トキの絵が使用されている。© Olivier Langrand

 

これは保全が見事に成功した例ですが、ある時点ではトキがほぼ絶滅していたことを忘れてはなりません。日本と中国の、自己犠牲をともなう熱心な保全者たちが、トキを絶滅から救い出したのです。



トキは佐渡島だけで知られているわけではありません。佐渡へ向かうフェリーに乗るために、東京から新潟へ向かう新幹線の名前は、「Maxトキ」です。© Olivier Langrand

  

今日、佐渡トキ保護センターでトキを見ることができますが、佐渡の湿地や草地、水田などでは野生のトキを見ることができます。 

佐渡の野生のトキ。観測できた10羽のうちの1羽。© Olivier Langrand

 

トキが全国的に知られることによって保全活動継続の助けとなり、日本の他の地域でもトキが見られるようになることを願います。


日本と中国が協力しあって成功したように、他の絶滅危惧種の保全にもよい影響を与えることを願っています。